子どもの1歳6カ月健診でことばの遅れを指摘された私は、子どもの発達に関する書籍を何冊も読みました。その中から、子どもが4歳になった今でも読み返している大切な一冊をご紹介します。
こんな本です『子どものこころとことばの育ち』
『子どものこころとことばの育ち』(中川信子・大月書店・2003)は、ことばのしくみや脳のはたらき、ことばが育つ環境や丁寧なかかわりについて、言語聴覚士である中川信子さん(以下「中川さん」)が、わかりやすく教えてくれる本です。巻末には、関連する書籍やウェブサイトも掲載されています。
なにより、子育て中のお母さん・お父さんの心配や不安に寄り添ってくれます。「はじめに」から「おわりに」まで一冊まるごと、やさしい(「優しい」「易しい」両方)文章で、読み進めるうちに私の不安は薄らいでゆきました。
特に印象に残った部分を以下にまとめます。
言語聴覚士(ST)の仕事
言語聴覚士(Speech-Language and Hearing Therapist 略してST)は、医療機関、保健・福祉機関、教育機関などで、ことばによるコミュニケーションに問題がある方を支援する専門職です。
参考:言語聴覚士とは|一般社団法人 日本言語聴覚士協会
中川さんは子どもが専門のSTです。発達が遅かったり、ことばに心配なことがあるお子さんの支援をされていますが、その仕事内容については、こんなふうに書かれています。
私が実際にやるのは、子どもと楽しく遊ぶことです。
『子どものこころとことばの育ち』(中川信子・大月書店・2003)
配線工事
脳のしくみを 配線工事 にたとえて説明されていて、これがとてもわかりやすいです。
ニューロン(脳細胞)を豆電球、神経を電線にたとえて、各器官との配線工事ができると豆電球が光る、つまり口や舌を動かしたり、立って歩いたりできるようになる。大まかにまとめるとこんな感じです。
ADHDや自閉症スペクトラムについても、電気の流れ にたとえることで、了解不能な行動も理解しやすくなります。
「健診」は「検診」ではない
日本の乳幼児健診は、世界に誇れる制度だそうです。
検査して診断する「検診」ではなく、健やかさを診査する のが「健診」です。
お子さんのことばについて心配になることがあったら、健診のときに(または随時)、地域の保健センターなどの保健師さんに相談してみるのもおすすめです。
ことばのビル
「ことばが遅いのは心配、相談機関もなかなかない」という場合は、必要以上に心配はせずに、「ことばのビル」を建てる暮らしに取り組みましょう。
ビルを建てるときは、屋上からつくったりはしません。まずはしっかりとした土台をこしらえます。ことばが育つときも同じで、しっかりとした土台が大切になります。
ことばのビルの土台は、からだづくりや生活リズムです。
規則正しい生活、からだを使った遊び、…おとなが楽しめて子どもも思わず笑顔になり、笑い声が出てしまうような遊びにつきあうことが一番です。
『子どものこころとことばの育ち』(中川信子・大月書店・2003)
子どもの気持ちを大人が口に出して言う
「おおー、痛かった痛かった」って言ってもらって、「痛いよー」と泣き、お母さんに「ちちんぷいぷい」とおまじないをしてもらって、けろりと立ち直るのがいいのではないでしょうか?
『子どものこころとことばの育ち』(中川信子・大月書店・2003)
これは、ドアにおでこをぶつけて泣きそうな子どもに、ついつい「痛くない!」「ガマン!」と言ってしまうお母さんへの助言です。
「おいしいね」などのプラスの気持ちは口に出しやすいのですが、「むずかしいね」「くやしかったね」のような マイナスの気持ち を口に出して言うように努めてみましょう。
みんな特別な子ども
中川さんは「障害やその心配があろうとなかろうと」という目線で語りかけてくれます。障害のある子は 特別な対応が必要 という意味で 特別な子 ですが、もともと子どもは みんな特別な子 です。全編を通して、以下のような記述がたくさん見られます。
- 多かれ少なかれ、人は能力のでこぼこを持っている
- 「こまった子」ではなく「こまっている子」として受け止める
- 「登れない」のではなく「手助けがあれば登れる」のだから、登れるように大人が工夫する
- 発達の遅れがあろうとなかろうと、評価の目でみない
- 「今」「ここ」にいること自体を楽しむ
この一文『子どものこころとことばの育ち』
でも、どんな子であれ、どんな親であれ「責めない」ことが原則です。
『子どものこころとことばの育ち』(中川信子・大月書店・2003)
「じょうずでない」お母さん、「受け入れがよくない」お母さんも、もしかしたら、とても育てやすい、発達の早い子を持っていたら、とてもじょうずな子育てができていたかもしれないのですから。
ことばが出ないことよりも、なんだか落ち着きがない、ちっとも目が離せない、ほかの子みたいに座って待てない、そんなことでイライラが抑えられずに子どもを怒っては「なぜもっとおおらかに育てられないのだろう」と自分を責めることを繰り返していた私は、大げさではなく、この文章に救われました。
ことばの遅れは心配しない、対応しましょう
ことばの遅れは、必要以上に心配はしないで、丁寧なかかわりを心がけてみましょう。具体的な方法は、この本にわかりやすく書かれています。
怒ってしまうこともありますが、私も あるがままの子どもを大切に を心がけます。
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